5月に博士課程進級試験をすべった学生が、それでも修士号だけは取って卒業したいというので、必要課題となっている研究論文を書かせた。北極振動に関するレビューである。そのコメントを書くのに半日を費やす。さいわいこの学生はアメリカ人なので、中国人などの書く論文と違って、英語をなおす必要があまりないのは助かる。しかし、肝腎の中身の方は「軽量級」という感じだ。
必死の努力で非対称混合問題論文の第一章を書き上げた。書きながらふとGRLの電子版を読んでいたら、Tim Hallの最近の論文で、対流圏界面を通過する質量輸送のみつもりに関するものを見つけた。曰く、粒子移流問題という手段に頼る限り、質量フラックスの見積もりは、粒子が圏界面を通過したあと次にまた圏界面に戻ってくるまでの時間(滞在時間)によって全然違ってくる。とくに、この滞在時間を限り無くゼロに近付けると、フラックスが無限大に発散してしまうのだそうだ。つまり、粒子移流問題は質量フラックスの計算方法としてはあまりすぐれていないということですな。実際、過去のフラックス見積もりは人によってかなりばらつきがあって、この滞在時間依存性を考慮にいれると、よく説明がつく。これは、小生のトレーサー法に軍配を上げる有力な資料になりそうであるわい。
アメリカに住んでいてうっとうしいと思うことのひとつは、勧誘電話の多いことである。朝昼晩と時間を選ばず、多い時には1日6-7回、ありとあらゆる職種から勧誘の電話がかかる。食事時にかけてこられるのが一番うっとおしい。しかも、相手は一発勝負の押し売り攻勢をかけてくるので、ていねいに応対して断ったりなどという悠長なことを言っていては、10分も20分も時間を無駄に費やすことになる。最近では「興味ありません」と言って電話をがちゃんと切ることも多い。電話口の応対としては最低だが、かけてくる方もこちらのプライバシーを勝手に侵害しているのだし、一日に何本もそういう電話がかかってくれば、つっけんどんにもなるというものだ。その点、イギリスにいた時は勧誘電話はほとんど皆無に近かったし、日本だったら少なくともかけてくる相手は礼儀正しい。そもそも、電話勧誘をしている人たち本人だって、自分のところにそういう電話がかかってくるのがうれしいはずはないので、よほどお金に困っているか、図太い神経をしていなければ勤まらないだろうとは思うが。
小生と同じような考えのアメリカ人は、もちろん、ゴマンといる。いままでは電話会社にいくばくかのお金を払って、見知らぬ相手からの電話をフィルターするサービスを買うという方法もあったが、今回、連邦政府がはじめて勧誘電話の制限措置に乗り出すことになった。所定のウェブサイト(donotcall.gov)に行き、自分の電話番号を無料登録するだけで、10月からほとんどのテレマーケッターが電話をかけてこなくなる、というシステムだ。きょうがその登録受け付けの初日だったのだが、一日で63万5000人の登録があったというから、いかにアメリカ人が勧誘電話に飽き飽きしているかが知れようというものだ。たまには連邦政府も国民の役にたつことをしてくれるではないか。
熱波が一段落してさわやかな風が吹きはじめたので、以前から懸案になっていた裏庭の手入れをする。シカゴの夏の気候は暑かったり涼しかったり気紛れなので、できる時にできることをやらないと、何も片付かないのだ。まずは、パティオ横に生えている2メートルくらいの高さの潅木(名前は知らない)を根こそぎ引っこ抜くという作業。パティオを横に延長するプロジェクトの第一歩だ。潅木の枝や幹を刈りはらうのは刈り込みばさみとチェーンソーを使って難無くできたが、根っこが深く広くはびこっていて、これをスコップで除去するのにかなり手間取った。今までの経験から言って、根っこをきちんととりのぞかないと、たちまち新しい芽が生えてきてもとの木阿弥になってしまう。丸半日の重労働となった。
さて、書き始めた非対称混合問題の論文は、たちまち第一章第一段落でつまづいて沈滞している。まあ、筆の遅い小生のこと、驚くには当たらないのだが、こんなペースでは夏が終わってもまだ書き終わっていないかもしれん。いつだったか、うちのバイブル・スタディーで丸一年かけてエペソ書を読み、短い手紙であるにもかかわらず読み終わらなかったということがあった。それに匹敵する進み具合だ。
さて、さっきからこう書いている小生の手先から腕にかけて小さなアリが何匹も這い回っていて、気持ちが悪い。どうしたのかと思って調べてみると、どうも子供達がキーボードの上にお菓子をこぼしたかなんかしたらしく、キーボードの内側にアリが住み着いているようだ。キーとキーの間からいきなり出現して左右に歩き回っている。タイプするには劣悪な環境だ。
日中の気温が36度近くまで上がり、さすがに天井の扇風機だけではどうしようもなく暑い。長女のペットであるハムスターもぐったりしている。しかたがないので、冷房を入れた。ほんとうは冷房を入れなくても、2階と地下で気温差が10度くらいあるので、地下にいれば涼しい(というか寒い)のだが、いかんせん地下は物置きになっていて居住性に欠ける。
橋が落ちた鉄道は、復旧が7月2日前後の見込みだそうだ。独立記念日の休みなどもあるから、来週一杯は自宅操業ということになるだろう。昼間は家で混合に関する論文に手をつけ、また、学生の修士論文の手直しなどをする。
毎年この時期になると、新学期を視野に入れたコンピュータ関連の新製品情報が続々と入ってくる。今年は、プロセッサ・バス1GHzという新型のマックG5をはじめ、久々の更新となったMathematica 5、文献作成ソフトのEndnote 7など、日頃の商売道具が次々とパワーアップされている。が、悲しいかな、小生はハードもソフトも、旧バージョンをまだ完全にマスターしていないのだ。マックも2月に新調してから、まだ並列計算モードに移行したとはいいきれない。Endnote 6などは先月買ってからまだ箱をあけてもいないうちに、もう次のバージョンが発売になった。歳とともに世界の動きが速くなっているようだ。
夏至を過ぎたとたん急に夏らしい暑いかんかん照りの日が続いている。きのうは子供3人をひきつれて近所のプールに2時間行ったが、それだけで随分陽に焼けてしまったらしく、なんとなく身体全体がほてっている。
午前中家の仕事をひとつかたづけて、いよいよ今週からガンガン仕事をするぞ、と気合いを入れて駅に出向く。ところが、いくら待っても電車が来ないのだ。あれ、休日ダイヤだったかな、と時刻表を見直しても特に勘違いをしているようにも思えない。が、出発時刻を10分過ぎ、20分過ぎても電車は来ない。普段はかなりダイヤに忠実に走っているので、こんなことは珍しい。だいいち、ホームに他の乗客がひとりしかいないではないか。(そのひとりもやがていなくなった。)そのうち、駅の向いの駐車場に車が一台もないことに気がついた。ふだんなら通勤客の車でいっぱいのはずなのに。
何か変だぞ。ストライキがあるなどという話は全然聞いていなかったし、駅には何のはり紙もしていない…。(無人駅なので駅員に聞くというわけにはいかないのだ。)まさか、村をあげて小生のようなカモをかつごうというプラクティカル・ジョークか?という思いもちらりと脳裏をかすめる。しかし、それにしてもここまでやるか?30分待ったところであまりに変なので、時刻表に出ていた鉄道の案内番号に電話してみる。
閑話休題。この研究日誌を長らくお読みの読者でないと事の重大さがわからないかも知れないが、小生は先週ついに携帯電話を出先からかけることに成功!電話を購入してから8ヶ月の苦闘がついに実を結んだのであった。(涙)
で、電話に出た係の人のたまふ。「現在UパークとKトンの間は全列車運行停止中です。」
小生「それはまたなぜですか」
係「ラジオもテレビも御覧になってないんですか。Rデール近くで火災が発生して木製の橋桁が焼け落ち、復旧の見込みは立っていないのですよ」
げげ。なんてこった。通勤の足がこれから何週間かにわたり奪われたことになる。仕事はどうなるんじゃ。
気分転換に駅前の日本食屋で辛子鉄火、うなきゅう、えび天のコンビネーションにぎりのランチを食べる。みそしるとサラダもついて、これで8ドル95セントというのは非常に良心的な値段だ。味もわるくないぞ。しかも今日は2ドル50セント相当の抹茶アイスクリームをオマケしてくれた。
今週は上の二人の娘が教会の子供キャンプに出かけていていないので、家内と三女と長男を連れて車で約45分くらいのところにあるアウトレットモールに出かけてきた。快晴の青い空に木々の緑や、原子力発電所の煙突からもくもくと湧き出る白い雲が映えてなかなか風光明媚なドライブであった。このアウトレットモールは州境を越えたインディアナ州にあるのだが、街の名前がミシガン・シティーと言ってまぎらわしい。(ミシガン州はさらにその隣の州で、約1時間ほどよけいに走らなければならない。)
さらに紛らわしいのは、我が家(イリノイ州)の近所にミシガン・シティー・ストリートという通りがあることだ。かつてシカゴ市内に住む友人を我が家に招いた時、この友人が途中で道に迷い、電話をかけてきて
「今、ミシガン・シティー(ストリート)ってところにいるんですけど」。
これを聞いた小生
「なにい、ミシガン・シティー!?(当然インディアナ州の街のことだと思い)なんでまたそんなところまでーそりゃ君行き過ぎですよ。すぐ引き返してきなさい!そこから45分はかかるよ。」
小生の指示に従って引き返した友人が45分後に電話をかけてきて
「あの〜。45分走ったら、シカゴの自宅まで戻ってきてしまったんですけど…」。
まあ、こういう混乱はそう多くはないのかもしれないが、紛らわしい地名というのはけっこう多い。その中でも最たるものの一つが、オハイオ州オックスフォードにあるマイアミ大学(Miami University of Ohio at Oxford) であろう。言うまでもないことだが、この大学はオハイオ州にあるのであって、フロリダ州のマイアミ大学(University of Miami)とも、英国のオックスフォード大学とも、なんら直接の関係はない。
そういえば、中学生のころ箱根の明星ケ岳に登山したとき、山道からいきなり渋谷区道玄坂というバス停に到着して仰天したことがあったっけなあ。
うう、なんかここんところ研究のことを全然書かず(書けず)、埋め草ばかりじゃ…。
先週は全米オープン・ゴルフが隣村で開催されていたため、どこを向いてもゴルフの話題で持ち切りだった。保険屋でさえ「顧客からUSオープンの切符をもらったので悪いけれど訪問日を木曜から金曜に変えてくれませんか」てな電話をかけてくる始末。もはや行きつけとなった駅前の日本料理屋も、朝日放送のクルーのために三日間仕出し弁当の配達をしたと言っていた。週がかわってようやくほとぼりがさめてきたところ。もっとも、ゴルフに全く縁の無い小生にとっては、少々雑音レベルが高かっただけで、別にどうってことはなかったのだが。
学期の間やりだめていた雑用をかたづけるのに追われている。二週間から三週間遅れになっていたEメール読みも、やっとこさひととおり目を通した。さいわい、本当に返事を書かなければいけないメールは一週間にせいぜい二本か三本で、そういうメールを膨大なジャンクメールの山から発掘することの方が、返事を書くより大変だったりする。緊急レスが必要だったSさん、遅くなってしまい、ごめんなさい。
まだもうちょっと、研究のフルモードに入るには時間がかかりそうだ。
英語で「あいつはトロい」というような意味で「The elevator doesn't go all the way to the top.(エレベーターが最上階まで行かない)」と言う表現があるが、よりによって小生のオフィスのエレベーターが壊れて、本当に上まで行かなくなってしまった。小生のオフィスは5階なので使用禁止は不便である。といっても、完全に動かなくなったわけではないのだ。これまでも1階で乗車して上に向かうと、時々3階あたりで予告なく急停止し、それからおもむろにガタンと30センチほど落下して動かなくなるということがしばらく続いていた。最初これに見舞われた時はかなり驚いたが、幸いいつも3階の出口のところで起きるので、今まで誰も閉じ込められたことはなく、10回に1回くらいの頻度だし、これもエレベーターの性格と割り切って使っていた。ところが先日、3階で急停止したあと、30センチ落下したエレベーターはその後も30センチ上昇→30センチ落下というサイクルをくり返し、運悪くたまたま乗り合わせていたH教授が、かろうじて非常電話で助けを求めたものの、腰を抜かしてそのまま気絶してしまった。救助隊が3階で上がったり下がったりしているエレベーターからH教授を救出したのは約10分後。大事にはいたらなかったが、そのうちエレベーターに乗るにもシートベルトやエアバッグが必要になるかもしれない。
キャンパスは卒業式の季節を迎え、スクールカラーの紫のガウンを着た卒業生や家族、かつての卒業生などで賑やかになっている。この時期は新緑も冴えわたり、キャンパスがもっとも美しい時期である。もっとも、小生が学位をとったアイビーリーグのプリンストン大学に比べると、シカゴ大学の卒業式週間は全体的にごくごく質素だ。プリンストンでは、歴代の卒業生がそれぞれに着飾ってキャンパスをあでやかに行進する「Pレード」というのが目玉行事で、大学を挙げてのお祭りという雰囲気があった。シカゴではそのような派手さはなくて、あちこちで卒業生の家族が思い思いに写真を撮っている、という程度。
今日期末試験の採点結果を提出して、ようやく春学期の長いトンネルを脱出した。最後までクラスをとっていた17人は学年も学部もさまざまだったが、皆勉強熱心で、好印象を受けた。これで9月までの間やっと研究に集中できるぞ。